私は助産師の仕事をしていますが、病棟に実習しにきた学生さんとか、ママ友とかによく言われるんです。

助産師って「産まれる」場面に立ち会う
なんて、幸せな仕事でしょう!
ま、確かにそうなんです、赤ちゃんを取り上げる分娩介助のイメージが強いですよね。
でも、本来はそればっかりでもないんですよね〜。
実際の助産師っていう仕事ってどういうものなのか、助産師の真実について、この記事で詳しくお伝えしていきます。
少し専門的で難しいことも出てくる(そればっかりです)のですが、ぜひ、参考にしてください。
- これから助産師を目指そうと思ってる看護学生さんや看護師さん、一般の方。
- 助産師ってどこで何をする仕事なのか、実際の話を聞きたいと思う人。
- 自分も助産師になれるんだろうかと悩んでる人。
- 助産師になる方法を知りたい人。
※この記事は日本看護協会出版会(新版)「助産師業務要覧 基礎編 第3版 2020年版」を参考に書いています。
助産師を目指そうと思う人が増えるといいな。
助産師の定義。
保健師助産師看護師法上の定義
助産師は国家資格なので、一応法律上の規定があります。
「保健師助産師看護師法」という1948年(昭和23年!古い)に記される「助産師」とは
「助産師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産または妊婦、じょく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを生業とする女子をいう
「保健師助産師看護師法」第3条
って決まっています。
ようするに「妊娠の時期から赤ちゃん取り上げるまで、その後2ヶ月間までの母児のケアをする人」だよって、この法律は言っています。
この法律は戦後に作られた古い法律なので、十分に助産師の仕事を表しているとは言えなくなってきたわけです。
なぜって、当時からは医療も高度になってきたし、母子保健などの社会制度も大きく変わってきているから。当然、助産師は医療専門職として期待される役割も変化しているだろうというわけです。それだけでなく、世間が(お産も含めた)医療に対して相当期待をしていて、質の高いサービスとしての医療を求めているということもあります。
そこで、「専門職としての助産師はこうあるべきだ」という倫理綱領を世界や日本の助産師職能団体がこぞって発表するわけです。
国際助産師連盟(ICM)による定義
ICMは、1972年から定期的に世界大会を開催していて、綱領などは都度改訂されてきました。
世界の中での助産師という医療専門職のあるべき姿を追求して、母児に提供されるケアの水準を高めていこうとしてるわけですね。ICMも助産と助産師の定義を文書にしているんですが、何が書かれているかというと
助産師の定義としては、その国の法律で定められた過程を経て正式に免許を取得し、かつ助産実践能力を持っている者とされます。ただ、免許あるだけじゃだめよってことですね。じゃ、実践能力ってなんだってことですが、それが倫理綱領なんかに記載されているわけです。
以下、日本看護協会のHPに掲げられている、ICM助産師の倫理綱領と助産師の定義の翻訳バージョンです。
気になる方はぜひ本物を読んでみてください。
ICM助産師倫理綱領 https://www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/rinri/icm_ethics.pdf
ICM助産師の定義 https://www.nurse.or.jp/nursing/international/icm/basic/definition/pdf/midwife_jp.pdf
これらの文書を読んでみると、保助看法の対象よりも広くなっていて、いわゆる周産期だけでなく人生の終わりまでも含めた女性のリプロダクティブ・ライフステージに対応した支援をしていこう、みたいな感じに広くなっています。
助産師は、単にお産を扱うだけの職業ではなく、女性の人生を支える医療専門職なんだということなんですね。
助産師の活動拠点
日本には39,613名の助産師が働いているみたいです(平成29年時点)「厚生労働省医政局看護課調べ」。
看護師が1,210,664名らしいので、およそ3分の1しかいないんですね。
助産師の活動拠点としては
- 保健所や自治体(3.5%)
- 病院(60.3%)
- 診療所(26.8%)
- 助産所(5.1%)
- 看護師養成学校等(3.8%)
- 社会福祉施設(0.1%)
- 事業所(0.1%)
- その他(0.4%)
参照)看護協会HP 統計資料室 https://www.nurse.or.jp/home/statistics/index.html
と多岐にわたるのですが、やはり病院と診療所で9割弱と圧倒的に多いですね。
ただ、保健所では地域での母児のケアとかとても大切な仕事ですし、社会福祉施設だと保育所などで乳児のケアなどを行ってる助産師もいたりします。今では、インターネットを使って産後ケア事業なんかを起業している助産師もいるようですね。
助産師になるためには
助産師は、看護師の免許がないとなれませんから、まずは看護師免許を取得します。
一般的にはその後、助産師学校に入学して、免許取得するわけですが。
学校の種類
助産師学校もいろいろあります。
専門学校や大学の専攻科、大学院など。それぞれ修学期間は1年から2年のことが多いですが、働きながら3年で単位を取るっていう学校もあったりします。看護大学だと4年のなかに助産のカリキュラムが最後の半年に組み込まれてたりする学校もあって、結構大変みたいです。
国家試験の受験要件である単位はどこに行っても変わりませんので、お財布事情と時間と立地が許せば好きなところにお進みください。
ちなみに私は公立の専門学校に1年通って国家試験受けて資格取得しました。公立なので授業料も安かったですね。
職場の同僚にイロイロ聞いてみましたが、それぞれの学校によってカラーがあって、実習や看護研究などの大変さが違うみたいです。
実習のこと
夏になる頃から実習が始まります。
助産師になるには、分娩介助を10例行うことが必須です。
そのうち1例は「継続事例」と言って、妊娠期から分娩、産褥期までを通して担当させていただく実習があるんですが、自分の受け持ち妊婦さんが入院してきたら、すぐに呼び出され、産まれるまで何十時間でもずっと一緒にいなくては行けないという修行僧みたいなことをするんです。
でも、妊娠中期くらいから妊婦検診のたびお会いして関係を作って行くので、お産を取り上げさせていただいた時は思わず涙してしまうような感動を味わえたりします。
お子さんがいる方は、助産師学校に入る時に考えないといけないのが、この実習期間のことです。
継続事例だけでなく、通常の分娩介助実習の時にも施設によっては夜間病院の寮に待機して、陣痛や破水で入院してきたら呼び出されるということが普通にあったりします。
お子さんが小さいと、預け先がないとか、旦那さんの協力が得られないとかの事情があると厳しいと思います。学校との契約というよりは、実習先との決まり事になるので、学校の先生にはどうしようもないことだったりするのです。実際にそれが原因で泣く泣く中退した同級生もいました。
ですから、お子さんがいて助産師目指したいといいうかたは、ご家族とかの協力体制を万全に整えてから臨まれると良いと思います。
助産師の仕事
助産師として働かせてもらえない!?
晴れて国試に合格し助産師になって分娩介助頑張る!なんて、ウキウキして就職すると、入職時の辞令発表で内科や外科などの一般病棟やICUや救急などのユニットに配属になったりすることも普通にあります。助産師採用されているにも関わらずです。NICUや婦人科ならまだマシです。
まっさらの新人だったりすると、まずは看護師としての技術を磨いてから助産に進みましょう。なんてことを言われてしまうんですね。私の経験からすると、いきなり助産業務に入るよりは絶対に看護師としての経験を少しでも積んだ方が助産師の仕事にも役立つので良いと思っているのですが。これすごい抵抗を示す新人がいるんですよね。そりゃそうですよね。
ですが、助産師も人をみる医療専門職ですから、心電図読めた方がいいし、急変対応なんて絶対できないといけないし、呼吸状態のアセスメントも、点滴の管理も、体位変換も、認知症のケアも、退院調整や、緩和ケア、エンゼルケアだってできないといけないんです。
産科単科だと、自立している患者が多いので、なかなか看護師としての広い知識や技術の習得は難しいのかなと思います。
ですから、看護師としての基礎を積んでから、堂々と助産師の世界へやってきてほしいと私は考えています。
混合病棟の助産師。
混合病棟っていうと、婦人科やら、整形外科、眼科、内科、などごちゃ混ぜに入ってる病棟のことですが。
産科単科の病棟や病院、診療所でない限り結構多い形態ではないかと(勝手に)思ってます。
病院も空床作りたくないので、産婦人科病棟に、個室だからいいでしょとか言って腰の痛い動けないおじいちゃんをぶち込んできたりします。
例えば、助産師が大半の産婦人科病棟に時々整形とか外科なんかが混じってくると、分娩介助したその次の日に、整形のオペ出しなんてことも日常茶飯事で起こってくるわけです。
ですから、私は絶対にお産と母乳ケアしかしないんだ!って意気込んでる方は、総合病院より産科クリニックがいいのかなと思います。
クリニックにもそれなりにデメリットあると思うんですが、本当にお産だけやりたいならクリニックなのかな〜って思います。もしくは、有名な総合周産期センターの中にある産科病棟の分娩チームみたいなところ。なかなか狭き門のようです。
それでは長くなったのでここまでにしようと思います。
この辺りのお話は改めて記事にしようと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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